月といのはプロかアマチュアを問わず世界中の写真家に好まれる被写体ですが、それと同時に基本的な知識がなければ綺麗に撮影するのは少し難しい被写体とも言えるでしょう。それでも幸い基本的なポイントさえ抑えて手順に則れば大抵のカメラで人に見せられるレベルの月の写真を撮る事ができます

大抵の場合、初心者が撮影すると月があるべき所に単に明るいシミができるだけというのも珍しくないですし、カメラを充分に固定できていなかった為に月で光の筋を描いてしまった日にはこっそり地団駄を踏みたくなるかも知れません。月を綺麗に撮影する(3)

月という一見簡単にも思える被写体を撮影するのに苦戦する写真家がなぜ少なからずいるのか、どうすれば綺麗な写真に仕上げる事ができる様になるのか。今回の記事では秋の長夜に気になるそんな問いにお答えします。

抑えておきたいポイント

まず月に向かってカメラを構える前に幾つかの基本的なポイントを先に抑えておきましょう。以下の点はまさに月の撮影のいろはです。月を綺麗に撮影する(4)

1. 月はびっくりするくらい明るい

夜あなたが何気なく浴びている月の光は純粋な太陽の光の反射による光で、太陽がなければ夜空に月を見つける事すらできないでしょう。元は太陽の光なだけに明るい月を撮影するにはそれなりの露出設定が必要になってきます。

2. 月以外の光源はそこまで明るくない

遠くの街や車の明かり、星空に輝く星も太陽光を直に反射する月ほど明るくはありません。つまり、街の光や星の明るさで露出を合わせていると月はひどく白とびしてしまう事になります。月が単なる明るいシミの様になってディテールの分からない写真をしばしば見かけるのにはこういう訳があるのです。

3. 月はびっくりするくらい遠い

月は地球から平均して約238,000km離れた位置で公転しているのできちんとピントを合わせるのが非常に難しいです。また、それだけ遠いという事はほんの僅かにカメラが動いただけでブレが何倍にもなって反映されてしまいます。

更に、月を寄せて撮るには望遠レンズが必要になります。少なくとも300mm以上の焦点距離がないと満足いく写真にはならないかも知れません。焦点距離の短いレンズでは夜の風景写真や都市写真の一部として月を取り入れると非常に面白いですが、後述するより高度な露出設定やピント合わせが必要となってきます。

4. 月はびっくりするくらい速い

月の地球に対する公転速度は時速3,000kmを超えます。カメラをずっと長く固定していると思っているより短い時間でフレームの外に月がはみ出してしまう事に気づくはずです。つまり長時間露光をすると月そのものの動きでブレが生じてしまいます。

以上のポイントは月の写真を撮る上で必要となってくる基本的な事項となります。これらの事を念頭に置く月を撮影するテクニックをご紹介します。月を綺麗に撮影する(5)

カメラの設定

カメラを固定する

どんなカメラを使用していても、とにかくしっかりとカメラを固定する事が重要となってきます。例えシャッター時間を短めに設定していても月との距離が長いために僅かな振動でも大きなブレに繋がってしまいます。丈夫な三脚を用意しておき、更にカメラやレンズに搭載されている手ぶれ補正を切っておくと手振れ補正機構そのものが引き起こす微弱な振動の影響も回避する事ができます。

シャッタを切る

三脚にカメラを固定していてもシャッターボタンを押す事でカメラが僅かに動いてしまいます。月の様な遠くの被写体を撮影する時はタイマー撮影機能を利用する事でブレを回避する事ができます。またケーブルシャッターも同様に有効ですし、ワイヤレスのリモートシャッターがあれば文句無しでしょう。

測光

非常に強力な望遠レンズを使用している場合を除いてフレーム内を月が占める割合は決してそう大きくは無いでしょう。そういう時、通常の測光モードでは月の明るさに合わせた露出設定ができない場合も少なからずあります。

月に対してスポット測光をしてからAEロックで露出設定を合わせてしまうのも手ですが、それでも設定に手間がかかります。カメラのマニュアルの露出設定が無い場合はこれがベストですが、月を撮影する時は基本的にマニュアルで露出設定を行うのが良く、ここからの説明ではマニュアルの露出設定を使用します。

ピント合わせ

スポット測光と同様に、スポットAFで月の位置に対して自動でピントを合わせるのも手ではありますが、月を撮影するときはマニュアルフォーカスが一番確実でよい結果になります。カメラやレンズのAF機能を切った上で、可能なら液晶画面で拡大表示をしながら手動で正確にピント合わせていきましょう。月を綺麗に撮影する(6)

撮影する

マニュアル撮影する際にはISO感度、絞り、シャッタースピードを自分で設定しなければなりません。使っているカメラでの撮影経験が豊富であればどういう設定が必要になるかすぐに分かる事もありますが、以下のガイドラインに従えば短時間で満足な結果を得る事ができるでしょう。

ISO感度

月の明るさを考慮すると通常ISO感度は100で十分でしょう。雲や風など気象条件によってはシャッタースピードを速くしなければならない事もあり、そうした時はISO感度を上げざるを得ませんが、ノイズを極力抑えるためになるべくISO感度は下げた状態で撮影しましょう。最終的な写真はクロップして拡大使用する事も充分ありえるのでちょっとしたノイズも目立ってしまいます。撮影環境を考慮した上でなるべくISO感度を下げて使う事を意識して下さい。

絞り

絞りを絞る(F値を大きくする)とピントの合う奥行き幅が広がるのできちんとピントの合った写真を残しやすくなります。ただし、極端に絞りを上げると回折の影響を受けやすくなる事には注意が必要です。回折が起きると返って画像のシャープさが失われる事になります。f/8からf/11の辺りを中心にどの位絞ると最もシャープな画像になるかスイートスポットを探してみて下さい。

シャッタースピード

遠くの動く被写体を撮影する時はいつでもそうですがシャッタースピードは短い方が良いです。まずは1/125~1/250辺りから初めて見るのが良いでしょう。シャッタースピードが長いと月の動きやカメラの微かな動きでブレが生じやすくなります。

ホワイトバランス

最初に述べた通り月の光は太陽光の反射です。色味を正確に再現する為にはホワイトバランスを昼光に合わせる必要があります。オートホワイトバランスでは曇天など別の設定になる事もあるので手動で設定する様にしましょう。

カメラ設定のまとめ

以上のガイドラインに則ればきちんとした月の写真を撮る最初の一歩を踏み出せるでしょう。まとめるとこの様なの手順になります:

  • カメラをガイドライン通りにセットして可能ならライブビューをオンにします
  • 露出設定をマニュアルに設定してホワイトバランスを昼光にします。
  • ISO感度を最小にして絞りをf/11、シャッタースピードを1/250に設定します。(ISO感度が200までしか無い場合はシャッタースピードを1/125にします)
  • 月をフレームに収めて可能ならズーム表示にします。
  • 注意して焦点を合わせます。極めてシビアな調整が必要になるのでフォーカスリングから手を離すだけでずれてしまう事もあり得ます。慎重に時間をかけてピントを合わせて下さい。
  • ケーブルシャッターやリモートシャッターを使うか、タイマー撮影を設定して撮影して下さい。
  • 撮影結果を確認して必要に応じて調整を修正して下さい*。

*最近の一眼レフではライブビューで露出を確認する事ができるのでシャッターを切る前の段階で露出を確認する事ができます。シャッターを切る前に露出を確認して絞りやシャッタースピードを調整して見て下さい。

色々設定を変えてみて何枚か写真を撮ってみると自分の機材ではどういう時にお気に入りの写真が撮れるか分かってくる事でしょう。この後の編集で調節できる部分もあるので撮影した段階で完璧でなくても心配しないで下さい。月を綺麗に撮影する(7)

前景をフレームに入れる

単に月の写真を撮るだけでは飽き足らない場合や焦点距離の短い広角寄りのレンズを使っている場合は、別の設定が必要になってきます。以前述べた様に月と街の明かりでは明るさが違いすぎるので完璧に露出を合わせるのは殆ど不可能と言えるでしょう。月に露出設定を合わせれば前景は露出不足になり、その逆もしかりと言った具合になります。

この事を上手く活かせば前景の建物などをシルエットとして撮影する事も可能ですが、前景に対しても適切な露出で写真を撮りたいという場合は2枚の露出の異なる写真を合成するというのがもっぱら用いられる手法になります。ここではつまり前景の建物だけに露出を合わせた写真と月に露出を合わせた写真を全く同じ構図で撮影するという事になります。この際、前景に露出を合わせる時は焦点も前景に合わせてしまうと良いでしょう。二枚の画像を合成する方法については次の章で解説します。

月の写真を加工する

撮影した月の写真の魅力を最大限に引き出すにはSkylumのLuminarを使って画像の編集を行う必要があるでしょう。殆どの月の写真はクロップやシャープ化、コントラストの調整が施されていますが、この画像編集ソフトならこうした編集も簡単に施す事ができます。また、複数のレイヤーを重ねる必要がある場合も直感的な操作で編集を行えます。

Croppingは他の編集内容と比べると違いが一番はっきりと分かりやすい部類になります。画像の中の余白となる不要な部分を切り取り、月を主役に据える為に使う事もあれば、月やその他の被写体に位置関係から構図を微調整する為に使う事もできます。

最終的に月だけを写真に残そうと考えている場合は、画像を拡大すればするほどノイズが目立ってくる事を忘れないで下さい。極端に画像を拡大するとノイズの影響が出てしまうので、月の写真を寄せて綺麗に撮影するには望遠レンズで撮影するのがベストになります。

シャープ化はソフトウェアに搭載されている何種類かのフィルターを試す事ができます。デジタル画像を編集する上でシャープ化は殆ど欠かせない処理ですが、少し間違えるとやり過ぎになってしまい、デジタルノイズが強調されたり光輪のような粗が目立つ様になってしまいます。それでもシャープ化の操作は月の写真をよりはっきりとさせる上で重要なプロセスと言えるでしょう。

コントラストの調整ではディテールを強調したり、諧調を整えて画像全体の品質を劇的に向上させる事ができます。Luminar Neoで利用可能なトーンカーブの使い方が分かるとより高度な諧調の調整が行える様になります。

コンポジット画像は異なる露出の画像をレイヤーで重ねて部分的にマスクや透明化の処理を施して1枚の画像に仕上げたものを言います。先程述べた様に前景に露出を合わせた写真と月に露出を合わせた写真を使って自然な見た目の写真を作り上げる為にはこの手法を用います。

露出の異なる写真を二枚撮影したら、前景に露出を合わせた写真をまずLuminar Neoで開き、月に露出を合わせた写真をレイヤーで一番上に重ねます。一番上のレイヤーの月以外の部分と一番下のレイヤーの月の部分をマスクしてしまえば月にも前景にも露出の合った写真を作る事ができます。

月の撮影を楽しんで下さい

ここで説明してきたポイントに注意すればちょっと友達に見せびらかしたくなる様な写真が作れた事でしょう。さぁ宇宙写真の魅惑の世界へようこそ!今回紹介した手順で撮影してみれば案外月の撮影も難しくないと思ったのではないでしょうか。でもここからが本番。創造力を働かせていかに自分のビジョンを写真で表現するか、人を魅了する写真に仕上げるかが重要になってきます。撮った写真を人と共有するのでも自分一人で楽しむのでも、この記事に書かれているポイントを忘れずに撮影を楽しんで下さい!

月を綺麗に撮影する(8)

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